【ことば倉庫】

詩集『灰も落とせない指』更新中/ほか作品集は最下部から

2024-01-06から1日間の記事一覧

#64 グレーノート

西と東をつなぐいつもの地下道にもの珍しい来訪者鳩は人の足音の間に紛れ込んで飛べないからと拗ねるよう 人前で鳴かないわけは相変わらずのグレー起き上がるように地上へ抜けるゲートをくぐる 駐輪所のチェーンをつたう蟻が黒光りする身体をしつこく謳って…

#63 損得勘定

子供のころ、近所の酒屋の親父がくれた日本の、数字の、単位の、一覧表幼馴染の、そこの息子と競うようにして覚えたわけだけど最後のほうはやけくそで不可思議、無量大数金満を気取って札を数えても笑止の千万は意味がないというようにうすら寒く実体をぼや…

#62 別の何か

狭い公園のベンチにちょこんと足を浮かせて 高いヒールで石を蹴り待ちくたびれて凍えてる 身につけるものを探してばかりで そのくせベッドの中の音のない熱が嫌いで 先に寝る気もない癖に寝癖付の俺を怒ってた わがままな女に憧れてレトロアメリカンな仕草を…

#61 成り立ち

四角四面のレッテルや四面楚歌からも逃げるなら人道のおりを指でなぞって囚われてしまえばいいよあるいは並木を外れて一本やりで立っててもなお揺れていたいと言うのなら困っていればいいんだよ 人は何を、すべきかと問う人は言う、信じてほしいと人という字…

#60 小さなわがまま

交差点で舞きあげられて轢かれては舞う春の証に散々だなと声をかけると 〝せめて、ちりとは呼ばないで〟 ピンクのスカート丸ごとまくられたあげくの肢体赤裸々だなって辱めると 〝実がすべてとは、思わないで〟 久しぶりに両手をポケットに入れた無防備に見…

#59 春眠・冬眠

誰かのために煙草を止めてまた始めた拍子に怪我をした 誰かの悪意、不意でついた傷は皺になる途中 繋ぎめははっきりと残ってる 努力している人はどこかに繋がっていくものそんなの宗教みたいでなんだか怪しいな 駅を歩けば、吸い殻のポイ捨て禁止・キャンペ…

#58 糞書き

たまゆらの華さえいじくりまわす蛇足のような余興のかま首がひとときの余談も許さない感じで鼻腔に花粉を塗りつける 予兆も感じさせない感じで求めてしまえば紛らわしい紛れで伝えても、伝えてもゲーム感覚のタレコミじゃ何人かを経たのちに捨てられる 糞み…

#57 審美眼

香水をも欺瞞を匂わせない水のように流れる惰性の女美しさの中に、馴れ合いときらびやかなピアスが煌く蚊の鳴くようなもったいぶったかすれ声で言うんだろ、言うんだろ?カフェラテ。ほら言った。 蜜を塗ったような瞳チークの行き過ぎもご愛嬌生まれつきの肌…