【ことば倉庫】

詩集『灰も落とせない指』更新中/ほか作品集は最下部から

#64 グレーノート

 

西と東をつなぐいつもの地下道に
もの珍しい来訪者
鳩は人の足音の間に紛れ込んで
飛べないからと拗ねるよう

人前で鳴かないわけは
相変わらずのグレー
起き上がるように
地上へ抜けるゲートをくぐる

駐輪所のチェーンをつたう蟻が
黒光りする身体をしつこく謳ってる
食えない風の働き者
ああみえても実は酸っぱいらしい

 

日は傾いて
自室にこもって他愛を晒す

たった2つのコードに載せて
テレキャスがパキンと鳴くから
意味も無くつまみをねじり続ける

救いようもなく落ちぶれて見える世
中庸でいないことは居心地が悪い
ハーフ&ハーフがお得感で
空いた電車に香ばしいお水のにおい

齢、二十を超えて
あいまいは伽藍の床に満ちて
列に便乗しただけの
耳年増で甘酸を噛み分ける

 

 

蟻か、梨かなんて時間つぶしに
群がって角を立てればいいさ

 

 

円柱形の灰皿を逆さまにして
まっ逆さまに吸い込んで落ち込んだ

世界がカラフルから遠いから
あの子の色っぽい仕草が光るんだっけ

それがちゃんとした色かは知らない
みんなを魅了するつもりかしらない

だとすればなおさら
ベタ嫌いの心をを塗りつぶすには
一本の線で十分だと
知っているとしか思えない!

 

――とにかく、灰色の一閃が貫いた

 

人から見れば汚れみたい
なんてことはどうでもよくて
まとまらない几帳面を開くより早く
おやすみ、の響きが耳で暴れる

グラスの底辺の滴にへばりついて
乾いた灰が大きな丸を作ってた

今日の失敗が人に笑われたって
明日が絶対取り返しにやってくる

 

二重人格?
格が違うな
おはよう、の声
息吹いたら飛んでいきそうな
いざこざまっさらのグレーノート