【ことば倉庫】

詩集『灰も落とせない指』更新中/ほか作品集は最下部から

#61 成り立ち

 

四角四面のレッテルや
四面楚歌からも逃げるなら
人道のおりを指でなぞって
囚われてしまえばいいよ
あるいは並木を外れて
一本やりで立っててもなお
揺れていたいと言うのなら
困っていればいいんだよ

 

人は何を、すべきかと問う
人は言う、信じてほしいと
人という字は
助け合って成るというけど
手書きで書いたその文字は
一方ばかりがもたれてた
片寄りに
正しさと間違いはないのだけれど
曖昧な偶像じゃなくて
目の前に立つ虚勢に

ちゃんと声をかけて初めて
成り立つって知ればいい

 

一定周期のメトロノーム
温かい指で留められて
それもまた人、と
性懲りもなく言えるなら

始まりも終わりも暗示する
いびつな成り立ちが顕れる

そしたら
下手な格好つけは外れて
ただの人と木に立ち返り
寂しさに出会えるだろう

 

呼吸のリズムがこだまし
息のはずみでまばたきし
ただの人と木が
そう
ただのひとときが
休もうか、って言い出せる
格好のきっかけになるんだ