【ことば倉庫】

詩集『灰も落とせない指』更新中/ほか作品集は最下部から

#57 審美眼

 

香水をも欺瞞を匂わせない
水のように流れる惰性の女
美しさの中に、馴れ合いと
きらびやかなピアスが煌く
蚊の鳴くような
もったいぶったかすれ声で
言うんだろ、言うんだろ?
カフェラテ。
ほら言った。

 

蜜を塗ったような瞳
チークの行き過ぎもご愛嬌
生まれつきの肌をおさめて
何を話しているんだか
唇ひんまげては
甘ったるい自己主張と共に
来るんだろ、来るんだろ?
クレームブリュレ
きやがった。

 

山積みのパンを持ち帰れ
どうせ悔いもしねえんだ

 

浮浪する者に立ち返れ
食い物にされるか食えないか
ふたつにひとつ
眼帯知らずの目がふたつ
審美眼、切ないくらい
泡まきちらして
焦がれて溶けて
分かってたけどと
結果論
お召し上がりかと
形式然
お気に召したかは上の空
開け放されたドア
甘いクロワッサンのにおいがして

流れ込む気流
ジェット機が空を舞ったら
思わず手を止め
誰かに叱られるのだろう

化粧も知らぬ、声と眼で
ぼんやりと然るべき退屈を
器ってやつから
こぼしてしまうのだろう

 

申し訳ございません。