【ことば倉庫】

詩集『灰も落とせない指』更新中/ほか作品集は最下部から

#60 小さなわがまま

 

交差点で舞きあげられて
轢かれては舞う春の証に
散々だなと声をかけると

〝せめて、ちりとは呼ばないで〟

 

ピンクのスカート丸ごと
まくられたあげくの肢体
赤裸々だなって辱めると

〝実がすべてとは、思わないで〟

 

久しぶりに
両手をポケットに入れた
無防備に見上げたら
からっと晴れた夜にいた

一歩、一歩と
柄にない殊勝の趣で
どこを向くでもなく街を縫い
肩を揉み、考えを凝らした

目を閉じれば
優しくもなれるのだろう
実を閉じれば
性根ってやつも分かるだろう

裸のこころ?
それがあるのなら結構だと
もっと綺麗に
開き直れるのかもしれない

 

身をぎゅっと閉じれば
厚手のジャージに弾かれて
鋭い言葉だけが
選られてられてしのびこむ

身を投じれば
自由になれる
浮かべて抗うほど
性の根が伸び意地を張る

〝ただの木、で終わりたくない〟
小さなわがままが風に舞う