2024-01-06 #62 別の何か 詩集『灰も落とせない指』 狭い公園のベンチにちょこんと足を浮かせて 高いヒールで石を蹴り待ちくたびれて凍えてる 身につけるものを探してばかりで そのくせベッドの中の音のない熱が嫌いで 先に寝る気もない癖に寝癖付の俺を怒ってた わがままな女に憧れてレトロアメリカンな仕草を気取り 缶バッヂをなぞりながら遅い到着を待つばかり 缶コーヒーが落ちれば合図君は強く駆け出す エンジン音に包まれた優しい暗闇が好きで 悩み事もないくせに眠れない俺の髪を触り 水気のなさを惚けながら綺麗、と言って眠らせた 本も携帯も嫌い横で、まっすぐ、上を見つめながら 愛想よりも率直な別の何かをくれた