【ことば倉庫】

詩集『灰も落とせない指』更新中/ほか作品集は最下部から

#62 別の何か

 

狭い公園のベンチに
ちょこんと足を浮かせて

高いヒールで石を蹴り
待ちくたびれて凍えてる

 

身につけるものを
探してばかりで

そのくせベッドの中の
音のない熱が嫌いで

 

先に寝る気もない癖に
寝癖付の俺を怒ってた

 

 

わがままな女に憧れて
レトロアメリカンな仕草を気取り

缶バッヂをなぞりながら
遅い到着を待つばかり

 

缶コーヒーが落ちれば合図
君は強く駆け出す

 

 

エンジン音に包まれた
優しい暗闇が好きで

悩み事もないくせに
眠れない俺の髪を触り

 

水気のなさを惚けながら
綺麗、と言って眠らせた

 

 

本も携帯も嫌い
横で、まっすぐ、上を見つめながら

 

愛想よりも率直な
別の何かをくれた