【ことば倉庫】

詩集『灰も落とせない指』更新中/ほか作品集は最下部から

2024-01-01から1日間の記事一覧

#50 願いは短絡

一年ぶりだ、ってお前それ毎年じゃねえか 二年ぶりだ、って一年やめただけじゃねえか 久しぶりね、って急に思いついたんじゃねえか まずまず、しばしば願いは短絡 ますます、白白 願いは暴落 言ってくれ、っておまえだって言えるんだろう 待ってくれ、ってど…

#49 素数

「24」好きだと言って憚らない幸運思い込んだ約束の数 確かに多すぎる約数は冷静になれば素朴じゃないね 手前の、23もっと小さな数々々無欲のいびつさに憧れたりもするんだよ 無味無臭の清潔漢にゃ目指すにも遠すぎるけど 素、捨てずに生きて敵が多くもなっ…

#48 ゴシック=ブルース

仲良くなりはじめのメールを見るのが嫌で詰まり過ぎる文字もあえて空けた改行も丸こいゴシックも嫌いになるんだねえ、どうしたらいい? へこんでる、とがってる変形を悟られたくなくて真剣な顔する自分が時計の針を進めるんだメリハリのない字体あえて退屈を…

#47 天使のそそう

注ぐアルコール天使が跳ねまわってる整える業務のスマイル下から添える温かい手絡める舌よりも眩しいの? 天使の羽根は回ってる絶好調よ、目配せをして蓋からもれる優しい手キャラメルより温かいの? 天使の反語は悪魔じゃないあくまでも人、そうそうヒト繁…

#46 Lost and Hound

その口から僕の名前が二度と出ないなどと考えもせずに暮らしていた川べりを歩いて君は草を摘んでた癇癪もちの僕は重い荷と苛立ちを向こう側に乗せてシーソーゲームをしてた 白いカーペットに深夜の映画がちかちかと映って宝石のカットみたいに尖る八重歯の艶…

#45 幸せのナンバー

うたかたも歌い方も忘れるために歩いていこう互い違いはだける諦めの響きも折りたたんで積んでいこう 羹(あつもの)が障ったら耳たぶをつかまえた冷め肌にかさと音がしてトーピンって何ですかどこか真新しい響き利率かなんかですか?もはや聞くにも、開ける…

#44 座右の銘

決めてしまえば、いままでの歩みが嘘になる座右の銘は、なんて質問答えなくていいはずだった ローマも老子も世界征服も興味がない征服より至福私服より起伏明日の服は明日決めるし決まらなかったら出なくていいまぶたを閉じたら起きられる起きなかったら、あ…

#43 親父と犬

えんじ色のジャケットにえんじ色のスラックス道行く名も知らぬ親父はどうやら直進が好きらしかった そうだ、ここは新宿衝突は避けられない 談笑にかまけあるいは電子の受信・発信に夢中でバラバラを向いて迫る若者のうちの一人を 親父はがっしとつかんだどけ…

#42 ツブラレタイ

秒の一粒一つぶ画鋲のひとつをつぶ貝のようにツブラレタイ瞑られたいそんなん書いたらああ堅苦しく空気も読めないしただいまはツブラレタイ こんなに飽きないのはあなたが初めてだけどぶっちゃけた話手放すことはこんなにも楽だわそんな風に聞こえたよ 雷の…

#41 轍

もうひとりで疲れてしまわないでそう言われて疲れていたんだそう気づいたひとりは想像したなりに楽しいけれど人に見せられるほどのものでもなくひとりの人に出会える人はどこにもいない 話しかけてくれたならそれは壊れるから 罰当たりな夢を見て花束は枯れ…

#40 人である僕は

人が好い、損をするぞと言われ人が悪い、口を開けと聞かされ 僕の平静は勝手にとられた 鋭角か、鈍角か、死角かそれとも錯角かつかみとろうとするものはいつも形がなくてなのに形見みたい哀しいことを記憶してる それでも暗い暗い夜を饒舌に明かして夜だから…

#39 フレイキィ・コーン

組んでゆく文字が全てジグソーパズルのピースみたいな 人体に似て穏やかでいびつな形で成されるべくして鳴るポロポロと音をこぼす キーボードからトウモロコシみたいに文字を抜き裏にある無数の差込口に指を突っ込んでなめとれば アルファベットの彫られたチ…

#38 拒絶

一彩構わず無心になって結局、構える身をもって拒むこととは何でしょね育むこととは難でしょね全てに好き、嫌いと付けるのは実に神経質な作業だ祟り目にぶつかりなんだか印象が悪い日いたいけに肩をぶつけて因縁という語に囚われて慣れない無心はかようかと…

#37 冗談だよ、冗談。

友達のことについてはあまり書かない。 いい加減さを確かめ合い長所は伝えられるわけもなく相談したはいいけれど、下手にこじれてしまうだけ。 なにを学ぶべきか語りもせずに、愚痴、愚痴ととばっちりばっちり遊ぶ約束は決まって急で、生活のリズムを侵し合…

#36 僕のフォント

流れる旋律の中でビブラートの振幅を使い分ける野獣であれ、小鳥であれイメージしたものに大、小と だけど心病んで、あるいは眠る前にはそんな使い分けも奪われてかけよう、かけないでおこう余韻で震える音叉口を結んで目を瞑る炎天下と毛布のようにかけてい…

#35 呼びかけの魔術

一生、呼びかけることなどないと思っていた名前を口にするときの勇気のような 逆らい続ける感情の、いっときの安定は聞いたことのない名前に目もくれず放っておく態度より強く 一分、一秒形になり積みあがる呼びかけの魔術 砂地獄のように、風鈴のように不思…

#34 0.25

例えば何かを学ぶとして学んでいる!そんな気持ちで悦に入る実に下らない奴だ どこから飛び出すかわからない膨大な問いの渦にあって保証を欲しがることや手に余るほどの喜びなど信じたくもない 0.25、視力が落ちたその理由が後ろ指に値しても整数の部分は切…

#33 ラブレター

電話をかけたいがどうしてもためらうような人のふり見て、その故事の意味合いは直して丸く収めるよりもその歯がゆさを人のまぶしさを どうせならプラネタリウムで廃れましょう丸めて捨てたラブレター角のある心の貧しさくず、と呼んでも降り止まぬ星の下なら…

#32 赤と黒の戦い

どれだけきれいな言葉並べてもきっとたどり着けない円周率も割り切れるそんな理想論でもなく永遠に続くはず盲目の邪推でもなく服はいくらでも服で身体を超えられないこと 赤と黒との戦いなんだ赤と黒との戦いなんだ 黒い髪に触れたら、見た目通り透き通るほ…

#31 前哨スイング

かの到来を待ちきれないまま何分咲きかの未熟な桜に寝巻き姿でスイングを贈る背中ににじむ汗の兆しが窓際にさざめく風にさらされ早すぎたかな、少し照れたらもういくつ寝ると数えるにはあまりにも待ちきれぬ訪れもうすぐだ緑を駆け抜ける白球に心は奪われて…

#30 だいじなもの

だいじなものをかんがえたじぶんにとってだいじなものこうきしんをうりさばいてあきないなんてうそっぱちだ おじいのたてたいえでたからかにそうぞうをしているやすらかにいだかれておじひにいそうろうしている もしぼくがききあしのみぎあしをぐっとふみこ…

#29 大志に抱かれて

ひれふすように胸元をなぞり即興の経文を白い身体に彫りこむ唇のペンを不器用にくわえてわずかに逆立つ産毛に触れる汗が噴出す癖のある髪が慣れない束をつくり微笑みむように体をよじる したたる滴すくいとるように包みとったふともらす弱ささえ吹きだして洗…

#28 誰にも、誰よりも

面倒くさいも邪魔くさいもこの際 さいは投げられた転げて叫んで瞬いてとぼけてすとんと落ちちまえ 線路空中に放ってはつなぎとめたがコースタージェットの波にまたがって元の木阿弥に転がった きっと居場所ってやつですか自分の部屋ってやつですね 意外、意…

#27 幼き道

どうしても、放物線という言葉には弱い。放たれたものよりも放ったという事実が見果てぬ衝突音を呼び起こすからだ。 路地を歩いていく。おなじみどころじゃない。むしろもう幼なじみ、そう言っていいんじゃないだろうか。 電線は飾り忘れた文章のようにから…

#26 灯響徒

灯りのさす道邪魔なものどけてお道化てお届けてスパンコールにピンサロ・バサロ飛魚みたいにすり抜けるまな板の上の川魚どぶの中から謙遜だ! 響く街の背に粋な夢出ました出まかせ風まかせ勢いだけで切なさだけでミラーボールに溶け合って徒と鳴いたが閑古鳥…

#25 余計なもの

必要とされることに疲れ必要なものさがしに疲れた 僕だけはきっとここに そう言い続けていたら孤独が首に絡まった まさか俺がそんな馬鹿なと踏みならされた言葉で揶揄くれる世にあわててワオンと鳴き暮れる 目盛りが0に戻るよう余計な感じは消えて指の包帯…