【ことば倉庫】

詩集『灰も落とせない指』更新中/ほか作品集は最下部から

#48 ゴシック=ブルース

 

仲良くなりはじめの
メールを見るのが嫌で
詰まり過ぎる文字も
あえて空けた改行も
丸こいゴシックも嫌いになるんだ
ねえ、どうしたらいい?

へこんでる、とがってる
変形を悟られたくなくて
真剣な顔する自分が
時計の針を進めるんだ
メリハリのない字体
あえて退屈を歪めればいい?

 

大好きだった青色は
沈鬱の象徴だって言うんだ
金に光る管楽器も
今やファラリスの残酷だ
強がりの独り言は
断末魔みたいに震えてる
なのに純粋な告げ方は
ほとんど変わらないと思わない?

 

過ぎ去った気持ちは
架空に近づいて
いろいろな想いが
渦を巻いている
花丸と満天なら嬉しいけど
雨が多すぎる最近だよね

大切なものは
目をやる数だけ落ちていて
それを拾えない毎回に
反省のポーズを繰り返す
だけど上手くいかない日々に
自分の身体を抱く夜が
鬱屈を眠らせるより
重要な気もしてるんだ

 

過去とか、未来とか
ゴシックの字体に
疑問符だけが小さく見える
錯覚?
だとしたらせめて、意味だけでも

頭でっかちに朝を襲う
誰に告げてるのか
それだけが分からない
言葉は夜に飛び出て
翌朝には凍りつく

些事で救ってくれたら
甘く、溶けてもいいのに
粉々になる気はないよ
だけどキンと頭痛いほど
浮かべてくれたって
罪じゃないと思わない?