【ことば倉庫】

詩集『灰も落とせない指』更新中/ほか作品集は最下部から

#28 誰にも、誰よりも

 

面倒くさいも邪魔くさいも
この際 さいは投げられた
転げて叫んで瞬いて
とぼけてすとんと落ちちまえ

線路空中に放っては
つなぎとめたがコースター
ジェットの波にまたがって
元の木阿弥に転がった

きっと居場所ってやつですか
自分の部屋ってやつですね

 

意外、意外もとどまって
怖い、怖いととまどって
それはそうだとまた落ちた

結局、流れてまた落ちた
名曲、鳴らして落ちてった
誰にも聞えないような
細かい細かい周波数に
誰にも聞えなくていい
忍ばせたままののメッセージ

台詞にすがって強がって
さらばの言葉も疑って
じゃあそれならと受け取って
切れた車輪に飛んでった

 

だけど本当に
訪れたのは別れのしるし
狭い世界に
たったひとつの辛い知らせ

まるで手作りのぬいぐるみ
少しだけまだ、温かかったな


どこにいるのだろう
つままれて、頬をつねって
悲喜こもごもでまぶた開ければ
悪い寝相がひとつだけ

もとから飛べないだろう
かすれた声で言い聞かせ
火花みたいに砕け散る
軋轢も瓦礫も見えやしない

一本、間が抜けた
間引かれた幸せを辛さと呼んだ
頼りない、欲しくもない

無我夢中の言葉に
心強まっただけのこと
なにも期待しちゃいない
導かれるままに刻んでしまう
疑いもせず託してしまう
選りに選った氷の飴玉を

降らしたのは誰か、分からないけど

 

外から吹きつける
身体に当たって落ちていく
粉微塵、季節外れの雪で
マフラーの隙が埋まってく

こすれた赤い鼻
だだこねて、こづいて
飾ることもない
うっとうしいままの言葉を

息づかいに溶かされて
もう一度、抱きしめよう
決心に濡れて振り返り
全力疾走、駅のホームも

消してしまえたら
いいのになあ