【ことば倉庫】

詩集『灰も落とせない指』更新中/ほか作品集は最下部から

#45 幸せのナンバー

 

うたかたも歌い方も
忘れるために歩いていこう
互い違い
はだける諦めの響きも
折りたたんで積んでいこう

 

あつものが障ったら
耳たぶをつかまえた
冷め肌にかさと音がして
トーピンって何ですか
どこか真新しい響き
利率かなんかですか?
もはや聞くにも、開けるにも

 

一個か二個の違いで
言葉遣いを変えて
歴史を生きた大画家を
呼び捨てる不始末
人はいやらしいことが
とても嫌らしい
雑に遺棄するばかりで
それもまた粋らしい
苦くても苦しくてもいい
ただ笑ってあげてくれ

 

指の傷は
腱まで達せず
快気祝いにバットを振った
柔よく剛を制して
とても遠くまで飛ばしたよ
一難去って
今度は左手のマメが
つぶれて血が滲んだ
不養生は続く

 

打席を外し
入口に袖口をこすったら
桜の花びらがよよと舞った

 

幸せのナンバー
どういう順で打てばいい
一番が好きだな
そこに優劣がなければ
幸せのナンバー
どういう風に奏でたらいい

派手なアピールは苦手だから
半端にたたずんでいようかな
でもやっぱり一番がいいよ
馬鹿みたいだけど
そこに優劣がなければ
それこそが
それだけが
幸せのナンバーと思うから