【ことば倉庫】

詩集『灰も落とせない指』更新中/ほか作品集は最下部から

#54 ダブルピース

 

子供のころ
近所の公園のそばに
いわゆる身体障害者の人がいて
童心のままで止まった
大きな身体に
坊主頭をゆすって
どうしてそうできたのか
勝手にトラックを動かしたり
問題はとても多かった

 

ある日、消えてしまったけど

 

遺族は
うつむきながら取り決めた
自分たちのやり方で
彼を愛していたようだった
それは、患いではなく
たぶん、さすらいの人だった
深夜、公園をふと見やって
浮かんだそんな昔話に
思い出しがてら拍をとった

 

「頑張って」
そう言われることが
たとえ即興の励ましだとして

頑張っているなどと
決して誇れないから
腹いっぱいに
もっと食べてと言われている気分で

 

糧だとたいそうに言うより
飯粒をただくっつけながら

見守ってるよ
また会いに来るよ
そんな証としての安息を
もうひとつの安息の形として
しまいこもうと思う

ひとつが世界を包む
世迷いごとみたいな
呑気な願いだとして
もうひとつは
特別な誰かを
誰かれに
感じ
感じさせるための切実だ

 

平然としたいでたちで
ぽかんとさすらえば
しょっちゅう誤解も受ける
だけど人のハードルを
むやみに取り決めることは
無礼で無粋なことだ

生まれたなりに拍がつく
粋とか野暮とかは
ビルん中じゃもう
流行らねえんだろうけど