【ことば倉庫】

詩集『灰も落とせない指』更新中/ほか作品集は最下部から

#52 微温湯

 

終電の終点で起こされた
足りないか、行き過ぎたのか
そんなのどうでもいいんだけどさ
タクシーの野郎共が
目配せくれんのが実に嫌だね
寒いね、やんなるね

 

右から左へ、上から中へへ
目移りする風の誘惑が
話が飛び飛び、それはさておき
ヒバリを吸ってはかんと鳴く
一葉、ずずっと読みまして
暇でもつぶして進みましょうか

 

人の氏の詮索など
できるわけがないだろう
どこのスロットにはじかれて
どんなルーツに落ちたのか
添削など、はがれっちまう
塗装が悪いでかたがつく
ましてや
死の詮索など
いまはどうでもいいことだ

 

人の名前集めて
モリー、と気取っても
時間が来たらめざましが鳴る
サムライ、と仮名っても
奪われた刀の目くらましだ

 

三温糖のつぶて
瞬く間の光の矢
踏み続ける韻
もはや咲かない甘い憂鬱

どこに行こうかそれだけ
どこに居ようがこれだけ

無茶苦茶やってるわけじゃない
読み続ければ、分かるはずだよ
残りは少ない
熱があるいまが貴重だろ?

 

足りないものを補えた
完璧だ、固めたはずが
削って、削っても
まだ手がずっ、と入ってしまう

出直しはできない
残りは少ない
息を止める日も貴重だろ?