【ことば倉庫】

詩集『灰も落とせない指』更新中/ほか作品集は最下部から

#51 にきび

 

椅子の上にあぐらをかいたら
膝がひっかかってもぐらない
諦めて足を伸ばした拍子に
ぐいと靴下を脱いだ

ついで
みたいに体操をして
首を場違いな背もたれにのせて
唇の上のにきびをさわる

「必要よ」
義理もない愛想もない
小娘にそう言われたら
「悪くねえな」と
俺はつぶやいたとさ

 

息抜きをして、頭を洗い流して
窓を開けたら透視さえうまくない
真っ裸の自分が立っていて
遅れて、芽生えて
大きくなる
肌のデコボコに
出来ものなんて、とんでもないよ

 

傷つき、気づくたび
下がる目尻の延長を、笑い皺と呼んで
撫でられる安心の情
あるいは苦悶の表情に
同じところが、へこんで折れて
寝ころび、息をつき
にきびを潰す

舌先でこねる
ガムを歯の裏に隠して
その迷い一旦は、認めておいて
隠さないで、ついておいでなどと

若さゆえにまぶした画鋲
尖って刺して、しゃがれた慕情
しぼんだ末に、忘れた希望
人に言うのはいっつも、事情
指に付いたかすかな血
「あんでもねえよ」
生まれた土地の方言で