【ことば倉庫】

詩集『灰も落とせない指』更新中/ほか作品集は最下部から

#23 情欲抑揚

 

哀しみっていうのは
平然と描くほど伝わるもんだよ
感極まって、なんて
壁にもたれてこぼすよりも

偉そうに腰掛けて独白するんだ

 

肘置きの先端をとんとんと叩き
痛いということを
シンプルに、適当なサイズで
ちぎって投げつけてやればいい

楽しみっていうのは
哀しみの中でこそ見えるもんだよ

 

いい思い出にしよう、なんて
計画する暇があったなら
しっかり過去形で堪能するんだ
後ろを向くキャスター、360 度
回って回って摩擦で止まる
いっそ床をくりぬいて
落ちて行ってこそ拍手喝采

 

笑いの擬音なんざ人それぞれ
強靭、の精神力も光に道連れ

ためたらためるだけ飛んでくのかい
レーザーみたいな情欲の単調
思いも寄らぬ端でこそいっちょ旋回
白い液がばらばらに溶けたよ

 

えへへと後ろ指で
弄られるのも悪かないな

あっ!と思いついたように床に就き
くりぬいた穴に侘びをする

叫ばない抑揚
余興の中で
ゆがいたら悪に溺れるもんだよ

流れる日々の余計なぬめり
精々握って救いとれ