【ことば倉庫】

詩集『灰も落とせない指』更新中/ほか作品集は最下部から

#19 油上の助滑走

 

己の決まりごとばかり
器用におしつけるばかりじゃ
銭と札しかもらえないから
無意識を言葉にしたい

刺激を受けて、すりこんで
ないものねだりは消え失せる
所詮は点数稼ぎ、それでも
見えない世界を描きたい

新しく拾った言葉
持っていたように見せかけて
すました顔しちゃ使えない
借り物の靴で、歩いていく


そう、ボウリング場で
子どもが強い助走をつける
そして投げる段になって
気づいたように止まって投げる
球の行く先を見守って

どうして
曲がってしまうんだろう?

速ければ速いほど
そんな幻想から解き放たれて

意識を楽にして
もう、曲がることにすればいいのに

童心は身体ごと頭を傾げる

どうせ止まるなら
ゆっくり行けばいいのに

 

うまくいかなくて
追いかけ回す八当たりは
恐る恐る走っていた
助走なんかよりずっと速い

ためらうから生き止まり
ためるばかりで息止まる

球の行く末は
歩んできた意味そのもの

 

余計なこと言うから
あんたのせいで間違えたよ!
叫ぶなら
きっと、そうなんだろう

それでいいじゃん

人はつい口を滑らせる