【ことば倉庫】

詩集『灰も落とせない指』更新中/ほか作品集は最下部から

2024-01-20から1日間の記事一覧

#73 天気雨、残弾は二発

陽が出ているのに、雨が降っているのか雨が降っているのに、陽が出ているのかタマゴが先か鶏が先かの例えに近く遠い安産難産、雄雌と巡らせて破れないならまさに例えとしてのみ機能する足跡だしただ起点と仮り決めた親鳥の存在だっていじめられるほうに問題…

#72 参る

回顧の糸、まきつけた 小指の先にはまた小指 赤い伝えなどはねつけた 張り詰めた肌、銀の雨 外は早よから風抜けた 雪駄で行く道涼しげで 真綿は空に飛んでった 締めつけたのは仮の綾 歪めすぎよ、行き過ぎよ 玄関迎えて声あった 次いで合う目も涼しげで 背、…

#71 えいほぉ

熱気球みたいな世界の端である意味では中心で たった今生まれてきたみたいに泣き叫びながらそれでも誉められたくて泳ぎつづける子供たち クロール、バタフライ激しく流れる波から苦しさ抜くために呼吸を覚えて居直る、また飛来繰り返す波の間は世界で一番に…

#70 それくらい

六年間の男子校生活漫画雑誌を飾る水着の柄と人気のパンの行方気になるのは、それくらい 学校まで続く単調な桜並木に似た明るく、よどみない日々が悩みでポップソングしか知らないくせに薄い眉間にしわを寄せた ふと降り立つようにきっかけさえ忘れさせる成…

#69 JAM

官能などとはおよそ無縁の心は焦りが生む湿り気になお次の温もりを欲した 近頃、背中の掻き傷などもらったわけでもなく爪噛みの、かすかな自傷癖もない では、なぜなんだろう 鋏にはじかれて端っこだけ残してぶらさがる爪に強く愛着を感じるのは 五つの指紋…