【ことば倉庫】

詩集『灰も落とせない指』更新中/ほか作品集は最下部から

#71 えいほぉ

 

熱気球みたいな世界の端で
ある意味では中心で

たった今
生まれてきたみたいに泣き叫びながら
それでも
誉められたくて泳ぎつづける子供たち

クロール、バタフライ
激しく流れる波から
苦しさ抜くために呼吸を覚えて
居直る、また飛来
繰り返す波の間は
世界で一番に美しいもの
呼ばれるにも簡単に事足りた

 

掻いて、掻いて、ひっ掻いて
裂いて、潜って、飛び出して

似合う服を手に入れて
涼しげな袖に腕を通せば
いまさらに浮び上がる
粛々たる疲れなど
一杯のバナナシェイクに涼しく溶ける

平泳ぎ?
自由形
ときどき、それ自体の響きに
申し訳なくなったり、憧れたりもする

だけど残らなかっただけで
きっと、やってきたんだ

 

鼻つまんで
傍若無人を耳抜きしながら
たまには
誰か救うことだって

仰向けになって両の手を振り回す
コースを外れなければ、それでいい

 

思いがけぬしぶきが
水の真ん中を引き裂いて
熟熟と腐りそうな音を立てても
大きな掛け声を
強く飲み込み吐き出して
ミキサーにかけてしまったらいい

いま一度薄氷を踏んだら
余裕しゃくしゃくと砕けるだろう

 

たった今
生まれてきたみたいに丸く眠り
それでも
息抜くために顔をあげる大人たち
習った覚えのないアドリブを
本当は習ってたはずの出鱈目を

見せつける
由緒?

いいや、
良いしょお