【ことば倉庫】

詩集『灰も落とせない指』更新中/ほか作品集は最下部から

⑨sentence

 

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形あるものはいつか壊れる
だから壊れてもいいものを造る
そうして、置き忘れたため息が
後ろのほうに投げ捨てられる

 人はいつの時代も土を掘る

光あるものは影を作る
だけどそれは形じゃないから
人は刺激と名づけて
いつだってそばに置きたがる

 自身が離れていくとしても

抱きしめて暮れる日
強く引き寄せすぎて壊れる日
後悔もあやふやなままに
いくつかの出来事が息を止める

 さようならは仕方がないこと?

光あるものは影を作る
影は集まって闇になる
すくうこととすくめることが
隣り合わせで孤独をつくる

 闇の下なら汚れも消える

すべてがOKと無責任を言えば
ビデオに取られ、形になり
言ったじゃないかと証拠になる
光あったものが影になる

 じゃあ何をすればいい?

途方に暮れて息を吐き出す
揺れる波にまた引き寄せられて
たどり着く 絡み合う
大きな海で歌う少女があった

 彼女は、絶望を知らない?

 

たとえ無知だとしても
波を裂く大きな声は強く
広げたか細い腕さえ強く
迷えるものさえ誘っていく

 じゃあ歌ってみるとしよう

気がつけば 大きな海などなく
波の音はこの胸から発されていた
憧れの中には光も影も
造られた味わいなど何もない

 頼りないものだとしても

無色透明の衝動に
彩るものなど何もない
彼女の存在が
一過性の偶像 だとしてもだ

 歌うと決めたのは僕なんだ 

 

僕が彼女にはなれないとしても
そんな証拠には形がないから
うずくまって下を向くより
叫べる分だけ 都合がよかった

 

―9月<味わい>の言葉―