【ことば倉庫】

詩集『灰も落とせない指』更新中/ほか作品集は最下部から

⑦文月

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文月、葉月、長月、神無月
焼けつく日差しの入り口に
意味深な暦を振り付ける

水無月が霜に変わるまで
季節が変わってしまうまで


あるものは文を書き
ありったけの葉を乗せる
長い季節を待ちわびて
神はいないと絶望する

年に一度 七夕を手にするか
常に適当 たなぼたを喰らうか
迷信も宿命も一緒くた
すべて同じだと言い張るか

意図することの大切さを 
往々にして、人は大事にしない

ただ、することと
会えて、することは


こんなにも違うっていうのに
こんなにも違うって言っているのに

 

蛇口に押し付けた喉に
誰かの悪戯で水が吹きだした
バーッと高くあがって、
霧が降って、虹が差した

ぽかんと見上げたら
奥歯に残る砂のかけら
そんな風に幾年を重ねて
いつか還る泥のおはか

細胞(つぶつぶ)の本質は水におぼれて
積まれたむくろは為替と違って
貝殻や皮肉でも、
換えのきかない真っ黒い影

葉かないな
戻かしいな

 

閉じる目にユーモアを 
もっと 影を晴らす余裕を もっと
信念が枕の裏にすべり落ちても
口を開くことにさえ、長い年月がかかりそうでも
いつか僕が粉々になったら
果糖かなんかと混ぜて
ジュースにするのは不謹慎でも
水玉模様の瓶に詰めて

潤いが欲しい、今際の際にまで望んだら
お笑いだと言われてしまうかも


だからこそ もっと
誰より もっと

 

―7月<望み>の言葉―