【ことば倉庫】

詩集『灰も落とせない指』更新中/ほか作品集は最下部から

⑥雨音

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夢 か ら醒めて
青い  びんの 中
くぐもって 響く その 声を
人形 は
黙って 聴 いて いる
それは  ピアノの 上の
聡明な くま
ショー ウィンドウを 嫌って
や がてある 一室に
身を おいた

 

ぽつりと 落とす 音は
誰かに ささげる しずく
飾り用の
カクテルの びんに 響いてる
時の 流れが
厚い  ガラスに ひしゃげ な がら
鍵盤の 上に
少年の 泣 き顔 をつくる

 

神 でさえ
その 嘆きは 知らない

 

聴こ えて はいても
救えな いなら 意味が ない
くま のみぞ 知る
透 明な 歌声は
自由を 求 めて
ふと迷 ってしまった しずくの音

 

その瞬 間
何 かが頬を 駆け抜けた

 

蛇口から 砂交じ   りの声
遠く 消える 波のようだ
少女 が眺 める
少年の静 かな コンサート
それ は繰り 返す音の 波
青がか った時
知り 得なか った音
気づけ なかっ  たこと
ふっ と近づい てここに ある

 

意味な んてないよ
ただ聴い ていて 欲しい
奏 者は 少女に
根拠な く強く 訴え  る
や  が て演奏が 終わり
少 女の頬 が渇く
くまの視 線  の先には
ふたつ の大き  なシル エット

 

かっこ つけと言わ れても
ま  だ早いと 言わ れても
同じ なんだ
求 め続け るだけ
鈍い音を伝い
濁って響 く潤い を
それ が何か と問われたら
「雨が 好きだ」 と
答えよう

 

―6月<潤い>の言葉―