【ことば倉庫】

詩集『灰も落とせない指』更新中/ほか作品集は最下部から

③オレンジ

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街を歩くと、そばを犬が通る
街を歩くと、たまにむしずも走る
昼になると、そばが喉を通る
昼になると、朝の悪寒が消える

一時、すべての瞬間がうすれ
濁り合って変な側道でつながれる
時々、砂時計が止まるように
ドキドキと温もりが始まるように

 

現在地、何丁目何番何号
潜在知、難しい言葉の記号
遊園地、楽しいところ
アルデンテ、ちょうどいいところ

僕たちは現在を散歩する
過去の足跡と未来の足音
そのあいだでかすかに
黙々とそして舞い散るように

 

朝方、オレンジが昇る
夕方、オレンジが沈む
朝方、くらくらする
夜毎、ムラムラする

威勢のいいことを言って
中途半端なところで飽きて
異性をちょっと意識して
休日に寝癖を立てながら



どうやって
息をしてたんだっけ?
藪から棒な蛇足に羊は解散し
ちょっとだけ、寝れなくなる

でかい音楽をかけたい
でも、近所に迷惑がかかる
ヘッドホンを店頭で物色し
いい感じのオレンジを見つけたよ

 

だから自分本位に耳をふさいで
ただの興味本位に襟を開いて
胸に手を当てれば徳、と聞こえて
少し待ったら毒、とも聞こえる

独特、功徳
そんなものを人脈と街は言い
不整脈の行く先に
正直者が舌を噛む

 

溢れるブラッドオレンジ
熱を冷ます酸性雨
不測でいい
タクトを振って

さあ胸、詰まり
眠れない夜に
まぶたに映る合図
空からの音楽を

音符のような歩みの音を
精一杯奏でていこうか

 

―3月<歩み>の言葉―