【ことば倉庫】

詩集『灰も落とせない指』更新中/ほか作品集は最下部から

⑫ミヤコミチ

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ぬかるんだ小道を抜けて
見上げた小さな公園の夜空
トランクを開けて
お菓子の袋を広げて
ギターを弾いた、ふりをした
地面は動いていない
ように思えるけど
誰かに言わせれば
回っているらしいよね

誰かにとって
当然に思えることを
疑ってみた試み
そう言葉にして切り取って
ゆるやかなレールに乗って
空を飛びたかった、だけなんだ

 

分かってくれ!
僕は叫んだ
君は考えすぎだ、と
考えすぎた結論をぶつけた

一緒に歩いた
東京の道は移ろいやすくて

何かを決めるには
複雑に入り組んで出来ていた

 

いくつもの年が移ろって
僕は何を失い
得てきたのかは分からない
だけど少しはきっと
身軽になることができたんだ
肩から腰にかけて
まだぶらさげってる宝もの
その正体は
君も好きだと言ってくれた
素敵な青いノート

 

目配せをする分かれ道
それぞれの路地
どこに抜けて、それぞれがどこへ着く
とりあえずとってみるポーズ
僕はこの場所を信じているよ

 

頭の中に
白い雲が浮かぶとき
厚い雨雲が
決まって、重なって飛んでいる
それは決まりごとだから
なかなか変えられるものでもない
複雑に入り組んだ
路地の名前はミヤコミチ
どこかで見たような
少年と少女が遊んでいる
そんな景色 飛ばすように
やみくもに手を動かしたら
ほんの一瞬
ここにいるんだと感じたんだ

 

うなだれて
雲がふっと分かれるとき
僕は何かを願った
僕らはあんまり変われない
だけどこの形 信じられるなら
僕にとってそれが
ひとつの幸せの形

やみくもに差す光
視線が厚い空を射抜く
少し泥のついた手で
いま、まぶしさの先を追いかけて

 

もしも手違いで
失望の柄を手にしても
それはくまのぬいぐるみが
パンダだった、くらいのこと
僕らはあんまり変われない
道すがら雨と陽を受けながら
固くなったり 時にやわらぐ

そう
ファインダーは常に 空を追ってる

 

―12月<願い>の言葉―